メタバースで地方活性化 「まちおこし」としてのXR

空間的な制約なく人が集まり、多様な活動を行うメタバースの世界。その特質から最近注目されているのが、地域活性化の方策としてのXR活用です。そこで今回はXRによる「まちおこし」の事例や利点、可能性について考察します。
自治体でメタバース課が発足
2023年2月、鳥取県が興味深い試みをスタートしました。県のVRに関する施策の専門部署「メタバース課」の設置です。
同課は正式な部署ではなく、あくまで架空の組織。メタバース空間に県のスペースを設け広報活動を行うもので、職員第一号として、同県を舞台とする神話「因幡の白兎」に登場する八上姫にちなんで名付けたAIアバター「YAKAMIHIME」を採用。チャットボットで24時間365日、音声と感情表現を用いたコミュニケーションを行えます。
鳥取県ではメタバースの活用分野を、観光や物産振興など様々に広げていくことを構想しており、例としてNFT購入で県を応援するプロジェクトなどを挙げています。全国に先駆けた地域活性化策として今後も話題を提供してくれそうです。
各地に広がるVRによる地域活性化

鳥取県の他にも現在、自治体や地域の企業・団体がVRによる発信に取り組んでいます。とくに、観光地を3D映像にして動画サイトなどに投稿する事例は、コロナによる行動制限の影響もあり大きく増加しました。
また、リモートで旅行を疑似体験するだけではなく、実際に観光地を訪れた人が、特定の場所にスマホをかざし、その地に関する追加情報を得たり、異なる季節や時刻の風景を重ねて表示したり、コラボした人気キャラクターと記念撮影をしたりといった、AR・MR的な企画も行われています。
人が集まり、様々なアクティビティを行うメタバース空間を提供する試みとしては、大阪府・大阪市が提唱し、街並み再現、お笑いや音楽などのイベントを展開する「バーチャル大阪」、首里城や国際通りなどを再現するほか、のべ10万人が参加したフェスの開催で話題となった「バーチャルOKINAWA」などが挙げられます。
これら地域メタバースは、地元企業による展示会や物販、バーチャルショップの出店などの経済活動を行うプラットフォームとしても期待でき、今後も目が離せません。
「関係人口」を誘致するプラットフォーム

冒頭で取り上げた鳥取県は、県のメタバースへの取り組みの目的として「メタバース関係人口」の創出を掲げています。これは、地域振興としてのXR活用を考えるうえで参考になる考え方です。
関係人口とは、文字通り人口としてカウントされる「居住人口」、観光で一時的に地域を訪れる「交流人口」のほかに、離れた場所に住んでいてもその地域に継続して関心を持ち、消費、生産、労働、コミュニティ作りなどの活動に参加する人の数。人口減少社会における地域活性化を考える際に、重要視される概念です。
関係人口を増加させる方策として、メタバースは大きな可能性を秘めています。空間的制約なく、地域に関心を持つ人が集まり、時間を過ごし、交流し、消費し、働く。そんな場ができれば、世界中どこからでも関係人口を迎え入れることができます。
全国の魅力ある地域がXRの取り組みにより関係人口を創出し、賑わい、新たな輝きを放つ未来に、大いに期待したいところです。