業界予測 2023年のVRはどうなる?

様々な分野でVRが導入され、私たちの生活やビジネスの形を大きく変えています。無限の可能性をもつVRは、いったいどこに向かうのか、興味は尽きません。そこで今回は、VR周辺の事象や注目の新製品などのニュースを踏まえ「2023年のVR」を予測してみます。
メタバース市場拡大で広がる可能性

大きな視点から見ると、VRの市場規模は拡大の一途です。総務省は「令和4年版 情報通信白書」の中で、メタバースの世界市場について、2021年の4兆2,640億円から、2030年に78兆8,705億円まで拡大すると予測。「メディアやエンターテインメントだけではなく、教育、小売りなど様々な領域での活用」が期待されるとしています。
VR・メタバースの市場拡大を後押しする流れとして、大容量のリアルタイム通信が可能となる5Gや、ブロックチェーン、AIなどの技術発展があります。これら技術のさらなる普及により、人間の感覚をリアルに再現、かつ空間的制約なく、信頼性高い社会活動が行える環境が整います。
「〇〇×VR」で産業構造が変わる

とくに2023年、変革が進むと考えられるのはビジネス・働き方の分野です。現在、建設、不動産、製造、物流など幅広い業種にVR技術が活用されていますが、その範囲が拡大されるでしょう。とくにリアルタイム通信が至上命題となる医療、自動運転などに有力なVR技術が生れることが期待されます。
また全業種といってよい分野で、コロナ禍でのリモートからの復帰の流れとともに「〇〇×VR」の視点で働き方が再考され、メタバース内に人が集まり協働するVRオフィス導入などの事業変革が進みそうです。VR導入のためのコンサルティングやビジネスソリューションの発展、関連人材の需要の高まりも予想されます。
業界地図を変えるテック企業の動き

IT・テック企業の動きをみると、今年も各社から数多くのVRデバイスが発売されます。その代表が年内に大型のVRデバイスの発売が有力視されるApple。同社はVR事業においてMR(複合現実)の概念を強調しており、新製品はリアル空間にVR技術を複合させる技術が数々取り入れられたものとなると考えられます。Appleのみならず、各社の新製品は「VRがいかに社会実装されうるのか」についての広範な関心・議論を生み出すものとなりそうです。
ゲーム業界でも、2月末発売予定のソニーのプレイステーションVR2など注目の製品がリリースされ、シェア争いに注目が集まります。最重要課題は人気ソフトの確保です。昨年末、マイクロソフトによる米ゲーム会社アクティビジョン・ブリザードの買収をめぐる裁判が大きく話題になりましたが、市場拡大が確実視されるVRゲームにおいて、ソフト囲い込みが本格化すると予想されます。
供給不足・価格高騰に懸念も

拡大の一途をたどるVRですが、懸念点もあります。その一つが半導体の供給不足。国際紛争によるサプライチェーンの不安定化に加え、米中の規制競争が拍車をかけています。
VRデバイスは、演算装置やセンサーなど先端的な半導体が数多く使われており、半導体の供給不足が製品価格上昇や供給遅延につながります。また物価高騰で消費が冷え込めば、VRへの投資スピード自体が鈍化する恐れもあります。
近年、技術の進歩、社会経済、国際関係などの事象とリンクしながら、常に話題の中心となっているVR。2023年は、外部的な制約条件もありながら、多くの人と企業が「VRに何ができるのか」を自分事として考え、VRの「真の実力」が現れる一年になるのかもしれません。