メタバースで働く!VRオフィスのメリットと課題

リモートワークの急速な普及など、テクノロジーが「働き方」を大きく変える中、現在注目が高まっているのが、バーチャル空間内に「社屋」を作るVRオフィスです。今回は、テック企業各社の動きにも触れながら、VRオフィスの利点や課題、そして未来について考察していきます。
「場」が生み出す高い生産性

VRオフィスは、サイバー空間に設置される仮想的なワークスペース。通常のリモート会議のように通話のたびに接続するのではなく、参加者が同じスペースに集まり、アバターを通して話しかけたり、ほかのルームに移動して会議を行ったりといった環境を作ります。
メリットとして、同じ「場」で働くことによる人間関係の醸成があります。コロナ禍で大きく進展したテレワークは、働く人同士の関係が切り離され、職場の一体感を弱めてしまうというデメリットが指摘されています。「リアルな職場ならちょっとした雑談ですむ話も、リモートでは時間を決めてフォーマルに話さなくてはならずかえって非効率」との声もあるようです。
一方VRオフィスは、休憩中の立ち話のようなインフォーマルなものを含め、コミュニケーションが自由にできるのが利点です。またVRゴーグル等を使えば、相手が目の前で話しているような感覚を得られるほか、3Dイメージ、グラフや図などを目の前にした、クリエイティブな議論も可能。空間的制約もないため、世界中の人が同じ場に集まり、協働する環境も実現できます。
ビッグテック、ベンチャーが次々参入

VRオフィスへの注目は確実に高まっています。マイクロソフトは、ビジネスコミュニケーションツールMicrosoft Teamsに、アバターでの参加などMR (複合現実) 機能を持たせる「Mesh for Microsoft Teams」の提供を開始。Mixed Reality ヘッドセット、Officeソフトなど、同社が持つ豊富な製品・サービスの強みを生かし機能を拡充させています。
Metaは、メタバース上のワークプレイスとして「Meta Horizon Workrooms」を提供し、Meta QuestなどVRヘッドセットのほか、PC、スマホなど多様な環境で共同作業に参加できるバーチャルな空間を構築。WEB通話ソフトや、マイクロソフトOfficeとの連携も可能となっています。
WEB会議の代名詞となりつつあるZoom も、2023年に従来のZoom Meetingに加えて、常時設置する仮想的なルームにメンバーが参加して通話する機能「Zoom Spots」のリリースを予定しています。
VRオフィスのWEBサービスを提供する新興企業の動きも興味深いところです。例えば米国のGather Presence社が提供する「Gather」は、RPGを彷彿させる親しみやすいドット絵のマップにデスクなどを配置するデザインが人気のバーチャルオフィス。国内でも、「oVice」、「NeWork」、「MetaLife」など、多様な機能を持ったサブスクリプションサービスが登場しており、有名企業や公的機関が導入するなど、普及が進んでいます。
コロナ後のVRオフィス、その可能性と課題
大きな可能性を秘め、話題が尽きないVRオフィスですが、導入の必要性を測りかねている企業が多いのも事実です。リアルとリモートの良いところを兼ね備える特質を理解し、VRオフィスの効果を十分に発揮することが重要になりそうです。
コロナ禍の行動制限が緩和され、働き方が新たにデザインされる現在のビジネスシーンにおいて、VRオフィスがどのような地位を確立するのか、目が離せません。