メタバースの企業での利用事例

次世代ITのキーワードとなっている「メタバース」。ビジネスでの活用も大きく期待されていますが、「メタバース」は定義があいまいでもあり、言葉が独り歩きしている感もあります。そこで今回は、現在の時点で、現実的に行われているメタバースのビジネス利用の事例を紹介します。
展示会はビジネス利用の最前線

メタバースの定義は難しく、本稿では目安としてVR・AR・MR技術※の利用だけではなく、参加者がある程度自由に行動し、コミュニケーションできる三次元の仮想空間が設定され、そのスペースをビジネスに活用している事例と考えます。
※ VR・AR・MR技術は、総称してXR技術とも呼ばれます
来場者は各社ブースを周りアバター担当者と商談したり、製品の3Dデータを取り込んだり、講演・セミナーを聴講したりといった様々な行動ができます。空間的制約がなく、リアル空間よりも利便性が高い部分もあり、中小企業の海外進出のきっかけになるケースも出てきています。
働き方が変わるビジネスプラットフォーム

私たちの働き方はテレワークなどで大きく変化しましたが、メタバース空間を仕事場にするケースもあります。例えばMetaが発表したHorizon Workroomsでは、バーチャル空間内でのアバターを介したミーティング、バーチャルホワイトボードでのプレゼンテーションなど、世界中どこからでもVR空間で「チーム」での仕事が可能です。
メタバース空間での、取引先とのビジネスマッチング、ジョブ型の業務委託、また採用などにユーザーの用途が広がれば、ビジネスプロセス全般を大きく変える可能性があるでしょう。
仮想空間に小売店舗を出店

小売店舗も有力なメタバース関連企業です。とくに、通常のネットショップ・バーチャルショップだけではなく、伊勢丹新宿店などが店舗展開するスマホアプリ上の「仮想新宿」など、仮想の街やショッピングモールを作り、複数店舗が出店する試みが出てきています。ライブやイベント、バーチャル観光などと組み合わせ、仮想の街自体に人が高まる工夫が期待されるところです。
仮想のモデルルームを見学
VR内覧・内見サービスなど、仮想空間と親和性の高い不動産業では、バーチャルな家屋やマンションが建つ「空間」を作る動きがあります。例えば大和ハウス工業が4月に公開した『メタバース住宅展示場』は、実際の家屋を再現した3Dモデルルームが建ち並ぶ仮想空間。担当者アバターが、住宅展示場内を案内してくれます。担当者だけではなく、訪れた顧客同士でもチャットで会話ができるといった工夫もあります。
メタバース内の広告展開が現実的に
博報堂の関連会社は5月、米国のオンラインゲーム「ロブロックス」の仮想空間の広告枠を国内企業向けに販売すると発表しました。ゲーム空間での広告販売は日本初。業種問わず、企業のマーケティング戦略として、紙、映像、WEBなど様々なメディアとともに、メタバース空間での広告出稿を検討する時代が来ているのかもしれません。
ビジネスが自然に生まれる「場」を
メタバースのビジネス利用は、将来に大きな可能性を感じさせてくれますが、同時に、スタートしたばかりで、まだまだ発展の途上であるとも感じられます。
多くの方がメタバースという言葉で想像するのは、世界中の不特定多数の参加者が様々な目的で集まる空間で、365日24時間、何かしらのアクティビティが行われ、自然発生的に新ビジネスが立ち上げられるような「経済圏」ではないでしょうか。今後、世界的な巨大メタバースのプラットフォームができたり、様々な主体が運営するメタバース空間が相互に乗り入れたり、といった動きが起こることも考えられ、展開から目が離せません。