バーチャルショップはなぜ売れる 通常のネットショップとの違いは?

VR・AR・MR等の技術を活用した、オンライン上の仮装店舗「バーチャルショップ」。有名店・ブランドによる開店が話題になることも増えてきました。このバーチャルショップ、実店舗や従来のネット通販サイト等と比較し、どのような特徴・メリットをもっているのでしょうか。実例とともに考えてみましょう。
バーチャルショップの導入メリットは?

バーチャルショップは、仮想空間に商品が展示され、VRゴーグルやスマホ、タブレットで店内を歩くように360度見回しながら購入できるシステム。実在の店舗の3D写真を利用したものや、3DCGで内装をデザインしたものなど、形態はさまざまです。
リアル店舗や通常のECサイトと比較した、バーチャルショップの主なメリットには次のようなものがあります。
● 空間デザインによるブランディング
近年、Amazonなど巨大ECサイトから有名ブランドが撤退するケースが話題になっています。その理由の一つが、ブランドイメージへの悪影響。たとえば自社の高級ブランドと並列して、見た目の似た価格帯の低い製品が「おすすめ」に表示されるなど、ブランドイメージをコントロールできず、価格競争に巻き込まれる懸念があります。
ハイブランドのショップや有名百貨店などの実店舗は「その場所で買うこと」そのものが貴重な体験になります。仮想店舗で、実店舗のような特別な買い物体験ができ、自由な商品ディスプレイ、音楽やグラフィックアートなど「魅せる」表現ができるバーチャルショップはブランディングに適しているといえるでしょう。
● 3次元により商品の理解が深くなる
通常のネットショップで服や家具を購入したとき、デザインやサイズなどがイメージと違う、という経験をしたことがある方は多いでしょう。バーチャルショップでは、アパレルのバーチャル試着、家具やインテリアの配置シミュレーションなど、商品を3次元で見せる工夫がしやすく、商品理解が深まります。リモート接客・コーディネートの相談などリモートによる人的サービスも併用できます。
● 出店にかかるコストを低減
バーチャルショップは、初期投資さえ行えば管理費は安く、365日24時間開店可能。実店舗で必要となるテナント費、光熱費、人件費などが抑えられます。現在コロナ禍の影響もあり、店舗縮小や新規出店が控えられるケースが増えていることから、さらに注目されます。
有名店舗が次々にVRショップを開店

現在、多くの有名企業、ブランドがバーチャルショップを導入しています。その事例をいくつか紹介します。
● BEAMS
アパレルセレクトショップのBEAMSは、VR展開に力を入れる企業の一つ。毎年開催されるバーチャルショップのイベント「バーチャルマーケット」に出店し、CGで外観まで作り込んだバーチャル店舗やアバター店員、限定商品などで話題を呼んでいます。
● 青山商事
全国展開する「ザ・スーツカンパニー」の店舗を3D写真で撮影したバーチャルショップを展開。スマホやタブレットを用いて回遊し、商品部分をクリックしてオンラインショップで購入できる。チャットボットによる問い合わせも可能です。
● ワコール
アンダーウェアブランド「YUE」のバーチャルショップを展開。特定ブランドのプロモーションとしてバーチャルショップを活用する戦略が特徴的。CGで売場を再現しており、洋服との組み合わせなどを見せるコーディネートルーム、期間限定のお勧め商品などの工夫も。
● 資生堂
銀座の旗艦店をCGで再現。地下一階から二階まで、コンセプトをもったフロア展開を行っています。アートや店内音楽などにこだわりがあり、日本を代表するコスメの老舗としてのブランドイメージを表現するミュージアムの趣になっています。
● KARE
ドイツの家具・インテリアブランド。バーチャルショップでは、KARE青山店が5フロア全て再現。店舗内に配置された状態で家具やインテリアが展示されているため、コーディネートの参考になります。商品はオンラインストアで購入可能です。
● 伊勢丹
仮想都市のスマホアプリ「REV WORLDS」内に旗艦店を再現した「仮想新宿伊勢丹」を提供。アバターで店内を周遊し、「デパ地下」での食料品やワイン購入、婦人服のショップ「ReStyle」での買い物が可能。CGスタイリストによる接客機能(不定期)、友だちとチャットしながら買い物ができるコミュニケーション機能なども利用可能。
メタバースでさらに発展する可能性

上で紹介したのは、主に有名店舗・有名ブランドによるバーチャルショップ。認知度の低い企業が独立してバーチャルショップをオープンする場合、集客に苦労するとも考えられます。ここで期待されるのが、メタバース内に複数店舗が出店する、仮想の街やショッピングモールなどのシステムです。
メタバース内にユーザが長く滞在し「ウィンドウショッピング」をする習慣ができれば、店舗同士の相乗効果も大きくなるはずです。メタバース内だけで店舗展開するブランドの登場、またメタバース内での展示会やファッションショー、ライブなど体験型イベント、複数店舗による連動企画など「そこでしかできない体験」をいかに演出するかがカギとなりそうです。
「買い物」を変革するブレークスルーに期待
バーチャルショップは着実に認知を広げつつありますが、スタンダードとなるのか未知数な部分が大きいのも事実。私たちの買い物習慣を大きく変えてしまうような、仮想空間上の「有名店舗」の登場、またEC企業、テック企業などによる、画期的なメタバースの出店プラットフォームのリリースなど、新しい動きに注目したいところです。