VR・メタバースがマーケティングに及ぼす影響とは?

企業経営の様々なシーンで活用されるXR技術。とりわけ近年、多くの企業から熱い視線を浴びているのがマーケティングツールとしての用途です。そこで今回は、VR・メタバースがマーケティング施策にもたらすインパクトと可能性について考えてみます。
マーケティングの全局面でVRの可能性

マーケティングは4P(Product:製品、Place:流通、Promotion:販売促進、Price:価格)の施策であり、顧客ニーズを満たすため「何を、いくらで、どこで、誰に、どのように売るか」の一貫した戦略を指します。
そしてVRは、これらすべての局面で効果を発揮すると考えられます。例えば「何を売るか」を検討するための市場調査、リサーチでの利用。地理的な制約なく幅広い製品をリアルに近い環境で体験できるVRを用いたモニタリング、展示会や仮想店舗での市場テストを実施し、開発やプライシングに活かすことができます。
売り方についても、バーチャルショップによる販路確保はすでに広く行われています。さらに、メタバース空間そのものを市場として、デジタルコンテンツやNFTなどの商品が流通することも見逃せません。
没入感が生み出す強いエンゲージメント

VRマーケティングで特に大きな効果が期待されるのが広告・プロモーションです。 没入感のある体験をもたらすVRが、エンゲージメントの高い広告ツールになることは論をまちません。
メタバース空間の広告枠を取引する代理店も登場しています。国内では博報堂グループ企業が2022年5月にメタバース型ゲーム「Roblox(ロブロックス)」内の広告枠の販売を開始したことが話題となりました。電通もメタバース広告の実証を進めていると報道されています。
メタバースのメリットの一つに、パーソナライズ広告と親和性が高いことが挙げられます。例えばターゲットの眼前に広がるバーチャル都市で、ビル上の大看板に関心の高い分野の広告を掲出すれば効果は高いでしょう。町並みのあちこちに、その人の興味を引きそうな製品のリアルな3Dイメージを表示させ、その場で購入も可能にする、といった販売チャネルの開拓を兼ねた方策も考えられます。
イベントでのARプロモーションに期待

仮想空間で時間を過ごす「メタバース人口」がどの程度増加するのかについては、未知数な部分もあります。そこでもう一つ注目したいのが、リアル世界の特定の対象をデジタルデバイスで観た際に表示されるAR/MR広告です。
事例としてリアルイベントでの活用があります。日本のプロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」では、試合の配信の際、コートの床などにデジタル画像による広告を表示する試みを行っています。ハーフタイム等にコート上にスポンサーメーカーの自動車が登場するなど、リアルでは困難な演出でファンの目を楽しませています。
このようにXR広告は、リアルとメタバース双方で価値のある情報を精度高く届ける技術となりえます。アイデア次第でまだまだ発展の余地がありそうです。
マーケティング戦略の新たなフィールドに
XRは4Pに代表されるマーケティング戦略すべてに変革をもたらしています。従来のマーケティングプロセスの一部を代替するだけではなく、既存のカテゴリを越えて付加価値の高い事業を創出する可能性も感じさせます。XRが、新たな発想でビジネスのフロンティアを開拓していく未来に期待したいところです。