VR導入で活用できる税制・補助金を総チェック

製造・業務プロセス、営業、広告、働き方など、ビジネスに様々な変革をもたらすVR技術。しかし大がかりなシステムや機器の導入は、コストが課題となります。
そこで今回は、主に中小企業のVRハード・ソフトへの投資の負担を軽減する、優遇税制や補助金・助成金などを見ていきます。
税優遇で初期投資負担を軽減

税制上、一定額以上の設備費用は一度に経費(損金)に算入できず、複数年で減価償却する必要があります。ここで初年度に大きく損金算入できれば、初期費用の負担感が軽減されます。
国では中小企業の設備投資を促進するため、要件を満たした設備投資費用を一括で償却できる「即時償却」や、損金算入額を増やす「特別償却」、また投資額の一定割合を直接最終税額から差し引く「税額控除」の制度を設けています。
● 中小企業経営強化税制
中小企業等経営強化法に基づく制度で、中小企業や個人事業主が生産性や収益性などを高める機器、ソフトウェアなどの設備投資を行う際、即時償却または取得価額の10%の税額控除ができます。
対象設備は幅広く「A類型:生産性向上設備」「B類型:収益力強化設備」「C類型:デジタル化設備」「D類型:経営資源集約化設備機械及び装置」に分類されます。
適用のためには、類型ごとに定められる目標達成の予測などを記載した「経営力向上計画」を策定、認定を受け、計画に基づき設備を購入する必要があります。経営力向上計画の策定に際しては、税理士や会計士、中小企業診断士らが登録する「認定経営革新等支援機関」に相談が可能です。
なお、同制度の認定を受けると税制の、他融資など金融支援を受けることもできます。
● 中小企業投資促進税制
中小企業や個人事業主が購入する、生産性向上を目的とする一定のソフトウェア、機械装置などの取得価額について、30%の特別償却または7%の税額控除を認める制度です。中小企業等経営強化税制のように事前の認定がなくても、確定申告時に書類を提出して適用できる制度であり、比較的ハードルは低いといえるでしょう。
コロナ禍で注目高まる、補助金・助成金

助成金・補助金は、投資費用を金銭で直接支援してくれる心強い制度。近年は、コロナ禍を契機としたIT化推進も関連した新制度が創設されています。
助成金は制度が存続する限り申請できますが、補助金は募集ごとに予算枠があり、募集時期を限定。上限に達し次第終了します。状況が逐一変わりますので、ここでは概要のみ簡単に紹介します。
● IT導入補助金
中小企業・小規模事業者が、業務効率化・売上アップ等を目的に導入するITツールの費用の一部を支給します。上限は450万円(通常枠)。登録された「IT導入支援事業者」が取り扱うITツールが対象です。対象事業者とシステムは公式サイトで検索できます。
2021年度の同補助金では、建築・不動産・建築関連のVRシステムなども指定され、VR導入と親和性が高い制度でした。ただし、2022年度は、2023年10月にスタートする消費税のインボイス制度に関連する会計、決済ツールが中心になるとされており、VRとの関連は薄くなる可能性があります。今後の実施要綱の発表に注目しましょう。
● ものづくり補助金
中小企業や小規模事業者が、革新的なサービスや試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資費用を支援します。補助率は3分の1または2分の1で、最大1250万円(通常枠)までが補助されます。対象となる費用の範囲が広く、過去事例の中には、非対面での営業やバーチャル展示場など、VR技術を用いた事業がみられます。
● 事業再構築補助金
コロナ禍で売上高減少に見舞われた中小企業を対象に、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編などの事業再構築を行うための機械装置やソフトウェア、クラウド利用料などの費用を3分の2または2分の1、100万円~8000万円を補助します(通常枠)。申請の際は、税制の項目で説明した認定経営革新等支援機関と共に事業計画を策定する必要があります。
● 業務改善助成金
厚生労働省が実施する雇用関連の助成金。中小企業等が生産性向上のための機械設備、コンサルティング、人材教育等に投資し、さらに事業場内最低賃金を引き上げた場合に、その設備投資費用の一部、30万円~600万円を助成する制度です。賃金引き上げ額、引き上げる労働者の人数等により助成率や上限額が異なります。
新制度にも注目し、賢く利用を

業務のIT化は、大企業と中小企業とで差がつきやすい部分でもあります。利用可能な制度を賢く利用し、無理なく効果的な投資を行いたいところです。IT化による生産性向上は政府にとっても中長期的な課題です。現行制度の改正や延長、新たな施策の創設などの動向にも注目していく必要があるでしょう。